20代・30代女性が「社会起業家」になった理由

自分らしいやり方で、社会の問題に前向きに挑み、「やりがいがあって楽しい」と自身の仕事を語る社会起業家の女性たち。自分が好きなことで社会の役に立つ──。インタビューを通して、そんな新しい働き方に注目します。~自閉症の子どもたちと家族をサポート~

学生時代のアルバイトがきっかけ、自閉症の子どもの療育を開始

ADDS共同代表(理事) 熊仁美さん(30歳) (写真:小野さやか)

「ずっと話せなかった自閉症の子どもが言葉を発したり、今までできなかったことができるようになったり。彼らの新しい可能性が生まれる瞬間に立ち会える。その喜びが、一番の醍醐味」あわせて読みたい若者の起業、意外と多い成功例 その理由は?さらば大企業 野心燃やす起業家たち

そう話すのは、自閉症などの発達障害の子どもと保護者に向けた早期療育プログラムを実施する「ADDS」共同代表の熊仁美さんだ。「日本では100人に1人の割合で自閉症児がいるとされています。でも、アメリカなどに比べてサポート体制が機能しているとはいいにくく、親同士が個別に勉強会などを立ち上げている状態なんです」

起業のきっかけは、心理学を学んでいた大学時代に始めた自閉症児療育のアルバイト。「1週間で10家庭を担当するほどの忙しさ。需要の多さに驚きました」。ニーズに対応すべく同じゼミの仲間と発達障害支援会を作り、大学院進学後も精力的な活動を続けた。“いつかこれを仕事にしたい”と思いながらも踏み出せずにいたが、「なぜか一緒に起業を模索していた(現・共同代表の)竹内とそろって博士課程進学の願書を出し忘れた」ことが起業への背中を後押しした。前向きに療育に取り組む姿勢や、明確な成果が評価され、親の会の満足度アンケートでほぼ満点の高評価にメンバーと共有している思いは「心から楽しむ」こと。そのため、何でも遠慮せず指摘し合う仲。職場には、今年初めて男性の新入社員が2人入った

当初は机上の理論にこだわりすぎたことも。「自分本位の支援ではダメ。それぞれの家庭や子どものニーズを満たすことで喜んでもらえるし、本当に社会に役立つ仕組みになる。経験の中でそう学びました」

いつしか“社会全体を良くしたい”という視点も芽生えた。「自治体と連携しながら、発達障害のお子さんが誰でも早期に療育システムを受けられるような社会を目指したいです」

熊さんに4つの質問
Q. 起業のきっかけは?
療育セラピストのアルバイトを経験し、需要の多さを感じていたため、友人と一緒に事業を立ち上げた。
Q. 活動を通じて自分が変わったことは?
周りのためという視点から、広く“社会全体をよくしたい”と考えるように。
Q. 心がけていることは?
自己満足の支援にならないようにする。相手のニーズに合ったものを提供してこそ、本当に喜んでもらえる。

~化粧品で貧困層の女性を支援~

“化粧”が持つ力で女性たちを元気にしたい

Coffret Project代表理事 Lalitpur(ラリトプール)社長 向田麻衣さん(31歳)

途上国への支援といえば、インフラの整備や教育をイメージする人は多い。しかし、向田麻衣さんが行う支援の形は“化粧”による心のケア。ネパールで人身売買の被害女性たちにメイクのワークショップを行うとともに、ネパール産の原料を用いたコスメブランド「Lalitpur」を展開。メンタルケアと雇用促進の両面からサポートを続ける。

「心に傷を抱え、無表情になってしまった女性たちがいます。けれどもメイクをすると、その顔が生き生きと輝きだし、自信を取り戻すのを見て私自身も本当にうれしかったんです」

高校生の頃、途上国の現状に衝撃を受け、ボランティアとしてネパールを訪問。そして、大学時代にトルコで聞いた「お化粧をしたい」という女性の声が活動の発端となった。化粧品メーカーを経て09年に独立。化粧品を途上国の女性たちに届け、ワークショップを実施する「Coffret Project」をスタートさせる。その後、ネパールの女性たちの雇用を増やそうと、ネパール発のナチュラルコスメブランド「Lalitpur」を立ち上げ、ネット販売する。ネパールの女性たちに対してメイクを行い、定期的なメンタルケアのワークショップを開催しているネパールのワイルドハーブや岩塩を原料にしたコスメ「Lalitpur」

「目がうつろな少女が、化粧をした後に自分の顔をしっかりと見るようになったり、内気でほとんど話さなかった少女がスタッフや他の女の子たちと話すようになったりと、短い時間のなかでも彼女たちの振る舞いに変化が起きています」

今は日本とネパールを忙しく行き来する日々。施設での愛称は、“麻衣ディディ(お姉さん)”。「私の心が乱れていると皆にも影響するので、どんなことがあっても毎日気持ちを整えてから向き合います」。これからも彼女たちが誇れる仕事をたくさんつくりたいと話す。

向田さんに4つの質問
Q. 起業のきっかけは?
15歳のとき、ネパールで支援活動を行う高津亮平さんの話に感銘を受けて。
Q. 活動を通じて自分が変わったことは?
困難なことや問題が起きても、すぐに気持ちの切り替えができるようになった。
Q. 心がけていることは?
自分の精神状態がネパールの女性たちの繊細な心に影響するので、常に穏やかな気持ちでいられるようにしている。

~ケニアのバラ購入を通じて雇用を支援~

大手製薬会社から起業家に転身 目指しているのは対等なパートナーシップ

Asante 代表取締役 萩生田愛(はぎうだめぐみ)さん(32歳)

赤道直下の国、ケニア。標高が高く、朝晩の寒暖差が激しいこの国は、世界的なバラの産地でもある。そんなケニアのバラをネット販売し、現地の雇用促進につなげているのが「アフリカの花屋」代表の萩生田愛さんだ。

「ケニアの貧困家庭では子どもが働き、学校に行くこともできません。親の雇用を増やすことで、この悪循環を断ち切りたい」

大学時代に授業で途上国の貧困に向き合い、「いつか必ず訪れよう」と心に決めた。帰国後は、大手製薬会社に入社。世界を舞台に飛び回り、充実した20代を過ごしていたが、転機は7年目に訪れた。勤務先が“途上国に薬を無償提供するプロジェクト”を始めたことで、「置き忘れていた」思いが再燃。悩んだ末に退社し、29歳でケニアに渡ったが、「援助慣れ」した人々の姿を目にし、ボランティアの在り方に疑問を抱く。現地を訪問したときの写真。「彼らと親睦を深めて信頼関係を築くのが目的。ケニアと日本との架け橋になれればうれしいです」ケニアの鮮やかで大きなバラ。生命力が強いのが特徴。「2週間以上持つという声をいただいています」

「自立を促すには、与えるだけでなく、収入を得られる道を作らないといけない。そう痛感しました」

目に留まったのは、日本では珍しいケニアのバラ。「大きく鮮やかな花を咲かせるバラは、もらった人の心も幸せにする」。萩生田さんは少ない本数でも販売してくれる業者を探し、帰国後にオンラインストアでの販売をスタートさせた。

「ケニアのスタッフは皆、同じ目的を共有する仲間であり、夢をかなえる手伝いをしてくれる大切なパートナー。雇う側、雇われる側ではなく、対等な仲間だと考えています」。彼らと一緒に、ケニアのバラで世界の人の笑顔が増えることを目指している。「今が一番幸せです」

萩生田さんに4つの質問
Q. 起業のきっかけは?
ケニアの人々が経済的に自立をするためには、働き口をつくり出すことが必要と考えた。
Q. 活動を通じて自分が変わったことは
会社員時代もすべてが満たされていたが、今の方が心が豊かになったと思う。
Q. 心がけていることは?
文化の違いによる困難も多いが、どんなときでも対等なパートナーとして、話し合って解決する。

(ライター 西尾英子)

女性社会起業家コミュニティ ミライ・ソサエティー
これは、私のフェイスブックで「女性社会起業家」を支援するコミュニティとして開設しました。
始めたばかりなので、まだ得意のジェンダーギャップ指数しか話題はないですけど、是非ご参加ください。