不妊治療の保険適用・オンライン教育、前例打破に壁

始動 菅予算(2)

不妊治療の保険適用の検討が進む(クリニックで説明を受ける三原じゅん子厚労副大臣ら)

不妊治療の保険適用の検討が進む(クリニックで説明を受ける三原じゅん子厚労副大臣ら)

「4連休に時間をとれませんか」。9月中旬、都内で不妊治療クリニックを開業する医師、杉山力一の電話が鳴った。相手は首相の菅義偉。会って話すのは菅が官房長官時代に勉強会で連絡先を交換して以来だった。

「助成金を拡充すれば出生数を年間1万人以上増やせる」。杉山が独自の試算で進言すると菅は「保険適用する。制度が問題なら変えればいい」と応じた。菅が首相の立場になった今、議論の進み方は早かった。

菅の肝煎りになった不妊治療は2021年度の予算編成でも重点項目だ。「730万円の制限をなくす」。自民党の議連はたたき台で、助成を受ける際の夫婦合算の所得制限を撤廃し、1回の助成額は15万円から30万円に倍増することなどを盛り込んだ。必要な予算は679億円と4倍超に膨らんだ。

助成からさらに踏み込んで保険適用の実現も目指すが、一筋縄ではいかない。「どこまで保険を広げるのか」。8日、横浜市のクリニックを視察した厚労副大臣の三原じゅん子らに、院長の貝嶋弘恒は問いかけた。

保険適用は全国で同水準の医療を受けられることが前提になる。不妊治療は一人ひとり治療の組み合わせが異なり、未承認の薬も使う。すべてを保険適用するには時間がかかる。一部の治療法が保険適用で標準になると、治療の選択肢が狭まる。産科医にとっては質の低下や収入が減る懸念も出る。菅のトップダウンでも医療現場から合意を得るのは簡単ではない。

オンライン教育の導入でも摩擦が生じる。文部科学省は概算要求でネットワーク整備やデジタル教科書の導入支援を盛り込んだ。デジタル改革相の平井卓也は2日、遠隔も授業時間と認めることを念頭に「不要な規制を外していこう」と文科相の萩生田光一に呼びかけた。萩生田は「遠隔授業そのものを否定しない」としつつ「どの教育段階もすべて授業とカウントするのは少し乱暴」とくぎを刺した。

教員の間でも従来のやり方が変わることへの抵抗が少なくない。文科省の中央教育審議会では「すべて遠隔を認めれば通信制と同じ」といった反対意見が飛び交い、9月末の中間報告は「対面と遠隔指導を併用し児童生徒それぞれにあった学びを実現する」と、慎重派にも配慮する玉虫色の結論になった。

医療も教育もコロナ禍で旧態依然とした体質が問題となった。改革のスピードを上げられるかは未知数だ。(敬称略)

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