つらい性被害に支援の輪 自治体により対応の差も

福岡県の「性暴力被害者支援センター・ふくおか」は女性だけでなく、男性や性的少数者の相談も受け付けている

福岡県の「性暴力被害者支援センター・ふくおか」は女性だけでなく、男性や性的少数者の相談も受け付けている

「どこに話せばいいか分からない」。性暴力被害に遭ったとき、都道府県にはワンストップ支援センターが設置されている。専門の相談員がいて、必要に応じて警察や病院につなぐ。弁護士の紹介も受けられる。心身に深刻な影響を与える性被害は早期の支援が重要だが、自治体によって対応に差があるなど課題も大きい。

■年中無休で24時間受け付ける名古屋の「救援センター」

愛知県の「性暴力救援センター 日赤なごや なごみ」は名古屋第二赤十字病院の中にある支援センターだ。24時間365日無休で相談を受け付け、診察や体液の証拠採取、緊急避妊などの処置にあたる。

女子中学生のAさん(14)は3年前、顔見知りの少年に物陰に連れ込まれ、性器を触られ傷つけられた。ショックで誰にも言えずにいたが、昨年、母親に打ち明けた。眠れず、学校に行けなくなった。心から笑えなくなり、夜中に「死にたい」と泣き続けた。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症していた。

今年3月に母と「なごみ」に行き、3カ月の入院で徐々に落ち着いた。「事件後、心に色がなくなったようだった。でも怒りたいときに怒って笑いたいときに笑えるようになった」。女医に体を診察してもらい「もうどこも傷ついていないよ」と言われ、安心した。今も精神看護専門看護師による面談が続く。「多くの人が支えてくれていると実感する」

Aさんの母は「なごみ」に行く前、地元の別の支援センターに電話していた。だが夜は開いていない上、家から通える病院は案内してもらえなかった。警察との連携も薄かった。自ら調べて訪ねた精神科医には「なぜ娘に『秘密にしておこう』と言わなかったの」と心ない言葉を突きつけられ、その場で泣き崩れた。

今は娘の未来に希望を持てる。治療を続ければ毎日学校に行けるようになるし、いつか恋愛もできる。「親に言えなかったことも打ち明けられる。なごみは何を話しても安全な場所」。弁護士を紹介してもらい、加害者の提訴も検討中だ。

■都道府県に最低1カ所の支援センター 夜間対応が課題

性暴力被害者支援センター・ふくおかは24時間365日、相談を受け付けている

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性暴力被害者支援センター・ふくおかは24時間365日、相談を受け付けている

福岡県の「性暴力被害者支援センター・ふくおか」も手厚いサポートが受けられる。緊急避妊薬の処方、性感染症の検査や治療、中絶にかかる費用は公費で賄う。弁護士への法律相談も1回目は無料。「未成年者や経済的に困窮している被害者も多いので無料と伝えると安心してもらえる」と相談員の浦尚子さん。県内の35の病院と提携し、診察には相談員が付き添う。

国はワンストップ支援センターを都道府県に最低1カ所は設置するよう求め、2018年に実現した。だが対応には地域差がある。性暴力根絶に取り組むNPO法人、しあわせなみだの中野宏美理事長は「機能が不十分なところもある。予算による差も大きい」と指摘する。

内閣府によると昨年6~8月、相談件数が201件以上あったセンターは10カ所。千件以上もあった。反対に50件以下は11カ所。「夜間の相談ニーズをくみ取れていない」(内閣府男女共同参画局暴力対策推進室の吉田真晃室長)。相談の3分の1は17時から翌朝9時の間に寄せられていた。性被害は夜に起こりやすいこともあり、夜間に対応できるかは重要になる。

年中無休で24時間受け付けているのは半数以下の20。地域差をなくそうと、政府は夜間休日のためのコールセンターを来年度中にも設置する方針だ。

人手や予算の確保は全国共通の課題になっている。相談員は被害者の心身両面への配慮が要る難しい仕事だが待遇は良くない。「なごみ」で3月までセンター長を務めた片岡笑美子さんは「支援にかかわる看護師も足りない。今後は人材の育成も重要」と話す。さらに「証拠採取や面談などの支援に診療報酬を加算してほしい」と訴える。

■男性や性的少数者の被害も

 被害に遭うのは女性だけではない。「性暴力救援センター 日赤なごや なごみ」のセンター長で泌尿器科の山田浩史医師は「児童養護施設で男児が性暴力を受けるなど、男性の被害も多いことが分かってきた」と言う。家庭内での性虐待や、上級生が下級生を性的にいじめる例もある。
 「性暴力被害者支援センター・ふくおか」は男性や性的少数者の相談にも対応。知的障害者の被害もある。「性暴力が認知され、表に出なかった被害が発見されるケースも多い」(相談員の浦さん)
 性被害当事者でつくる一般社団法人Springの山本潤代表理事は「英ロンドンには3カ所の支援センターがあり、1つは10代が対象。日本もいずれ専門分化していくことが大事だ」と話す。性被害は長期にわたり心身に傷を残すとされる。「中長期的な支援も必要」と課題を挙げる。
 政府は22年度までの3年間で性犯罪・性暴力対策を集中的に強化すると打ち出した。支援センターは各地で被害者を支える中核になる。橋本聖子女性活躍担当相は「相談内容を分析して今後に生かすことが重要。性暴力をなくすための教育や啓発も同時に進めていく」と対策に力を入れる。

(生活情報部 関優子氏)

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